治具という言葉をあまり聞いたことがない人も多いのではないでしょうか。検査治具もその中の一つで、研究機関では当たり前のように使われているのに、一般的に知られているとは言えません。それは検査治具の汎用性のなさから来るものであり、専門性が高すぎるせいで市販はとても出来ない物だからです。例えるならその検査にしかつかえない検査治具と言えるでしょう。
LANケーブルを製造するメーカーの内部では、不良がないか確かめるために大量のコネクタを用意して、しっかりと情報がやり取り出来るか確認しています。その検査治具はまるで市販のハブを長く引き延ばしたような形をしており、通信の不備があればランプが吐いて不良がすぐ分かるようになっています。その場ではなくてはならないものですが、ではそんな形のものが市販されていたとして使い道があるか、そういう話なのです。実際にそんなものは何の役にも立ちませんし、役に立たないので商品になっていません。
ただ、だからと言って存在価値がないのも確かで、これが検査治具というものであり、宿命とも言えるのです。ある場所の中では当たり前の存在感があるのにとても売れたものではないし、用途も限られている、なかなかロマン溢れる存在ではないでしょうか。用途が限られ過ぎているがゆえに、壊れた訳でもないのにすぐ使い物にならなくなり用なしになるのも定番です。必要があればまた、新しい治具が作られてその目的だけに使われます。